2017年7月18日火曜日

色街ジオラマ作家、山本高樹さんインタビュー

カストリ書房ではジオラマ作家山本高樹さんが制作した玉の井のジオラマを販売することとなりました。今回、作者の山本さんにインタビューする機会を頂戴しましたので、ご覧下さい。

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ーーーーこんにちは。インタビューに答えてくださり、ありがとうございます。山本さんのジオラマ作品は平成16年に発行された雑誌『荷風!』に掲載されているのを初めて観て知り、以来、頭の片隅でずっと気になっていました。もちろん作品も興味があるのですが、山本さんご本人や、制作の背景なども知りたく、インタビューをお願いした次第です。今日は色々と教えて下さい。現在、山本さんはジオラマを専門に手掛ける作家として活動なさっていますが、ジオラマ作家となる以前は、どのようなお仕事をなさっていたのでしょうか?
 テレビや映画などの美術の仕事をしていました。特にミニチュアや特殊な造形を作ってました。モノ作りの技術はそこで学びました。初期に手掛けたものとしては『帝都物語』(1988年)の特撮美術や、『七人のおたく cult seven』(1992年)のフィギュア・ジオラマ制作などがあります。

ーーーー特撮美術なども手掛けていたと言うことは、影響を受けた、いわゆる特撮モノなどがあったのでしょうか?
 子供の時に見ていたウルトラマンやサンダーバードなどの特殊番組です。あのころの子供は皆好きでしたよ(笑い)

ーーーー『荷風!』に使われることになった経緯を教えて下さい。
 特に発表の当てもなく、昭和の景色をモチーフにジオラマを作っていました。荷風の出てくるジオラマ『墨東の色町』を作り終えたころに『荷風!』が創刊しまして、ちょうどいいと思って投函したら、採用になりました。表紙と連載同時です。ラッキーでしたね。


『荷風!』(2号、平成16年発行)


ーーーー山本さんが初めて作った遊廓・赤線の作品は何でしょうか?また作るきっかけや動機を教えて下さい。
 永井荷風の「墨東奇譚」をモチーフにした玉ノ井のジオラマです。絵的には、滝田ゆうさんの影響も大きいです。今だに制作に悩むと滝田さんの画集を眺めてイメージを膨らませてます。

ーーーー山本さんは「昭和レトロ」をテーマに様々なジオラマを制作されていますが、遊廓や赤線は山本さんにとってどのような思いが込められているのか、改めて山本さんの口から伺ってみたくて。
 僕も実際には知らない世界だし、写真や絵や文章から想像するしかないのです。出来上がったジオラマは史実とは違うでしょう。僕なりに行ってみたかった桃源郷になっていますし、それでいいと思っています。失われた情景は美しいほうがいい。
ーーーー遊廓・赤線のジオラマに限定して、それらのジオラマを作る上で、一番難しい点と一番楽しい点を教えて下さい。
 何といっても、やはり人間模様です。どんな人物の、どんな暮らしがあったのか…。想像しながら作るのですが、うまく出来たりできなかったり、悩みながら作ることもまた楽しいところです。見る人に共感してもらえるように工夫しています。

ーーーー遊廓・赤線の作品をつくる際、資料をどのようなものを用いているのでしょうか?
 以前は木村聡さんの著書『赤線跡を歩く』シリーズなど参考に、僕も跡地を訪ねていました。資料には苦労しました。まさか、後にカストリ書房のような専門店ができるなんて(笑)。嬉しい驚きでしたね。

ーーーーありがとうございます(笑い)。山本さんのジオラマの多くには登場人物がいて、それぞれがストーリーを持っていて、役者のように演じているように映ります。いわば山本さんは映画監督のような役割だと、私は勝手に思っています(笑い)。山本さんの作品を見てワクワクするのは、ただ「精巧」という感想だけではなく、映像作品を観ているような感覚が生まれるからではないでしょうか。ジオラマに登場する人物たちに気をつけていることがあれば教えて下さい。
 仰る通りで、僕のジオラマは見せるための舞台で、登場する人形は役者だと思っています。現実の縮小模型ではないのです。時に思い切った誇張と省略もします。何を見せたいのか、どんなドラマを伝えたいのかというところが、一番肝心なのです。大事なのは対象に対する愛情です。遊郭、赤線、その他の多様な風俗は、昭和文化を語るにおいてはずせないし、いつの時代でも人に衣食住と共に、必要なモノです。僕の表現媒体はジオラマですが、そのあたりの気持ちを何とか表現しようと思っています。

ーーーーこれまで作ったジオラマは相当の量ですよね?どうやって保管しているのでしょうか?
多分50作品以上作ったと思います。手持ちの作品は展示会がないときには、倉庫で保管しているのですが、今や相当な量です…(笑い)。

ーーーージオラマを作った後に自分で鑑賞したりしますか?
 出来上がった時って、毎回後悔が残るのです。もう少しうまく出来なかったのかな…。ここ失敗したな…とか。さっさと納品して、後はそれほど見たくないものです。何年か経って忘れたころに見返すと、ああよく作ったなと客観的に見れる場合もありますけど。まぁ、ジオラマに込められた人生も、悲喜こもごもです(笑)

ーーーーカストリ書房で山本さんの作品を扱わせて貰えることになり、とても嬉しく思います。弊店は、それこそ平成生まれの若者や、女性も多く訪れるのですが、この時代の赤線などの文化を若者が興味を持っていることについて、山本さんにはどのように映っていますか?
 そんなのこっちが聞きたいです(笑い)。でも当時を知らない世代としては、僕も同じだし。きっかけは何でもいいので、かつてこういう文化があったことを知ったほうが人生充実して、豊かになるよって、伝えたいです。

ーーーー今後、作ってみたい遊廓はありますか?
とりあえあず、飛田遊郭は何とかせねばと思ってます。

ーーーーそれはとても楽しみです(笑い)。山本さんなら現役地帯のジオラマも、より活き活きと描いて下さりそうです。今日はありがとうございました。

▼ジオラマ昭和色模様『墨東の色町 ぬけられます』購入ページ

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▼昭和色模様『墨東の色町 鏡台の女』購入ページ

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